- 幻の山塊 -


2004.7.19


日本海側の暖かい低気圧が風の影響で山にぶつかり、上昇気流となって高度を上げ、その飽和水蒸気が冷やされて水滴となってしまう。
2日間の登山は、前回に増してそのガスに悩まされた。
 
前々から登りたかった山の一つであった八ヶ岳。
山梨と長野のちょうど境目にあり、南北に渡り峰を連ねる火山帯だ。
主峰の赤岳、横岳、硫黄岳の縦走をする予定だった。

早朝、ヘッドランプを点けて観音平からまず網笠山を目指す。
朝の澄んだ空気が気持ち良く、苔むした倒木帯を抜け網笠に着くと富士山と南アルプスが一望できる。
しかし長野県側の上空は分厚い雲が迫ってきている。
そして次第に霧が足下から風で押し上げられてくる。




富士山と南アルプス


 
結局その雲の中を目指す形となり、さらに上へと足を進める。
高度を上げるたびにガスが濃くなり、視界10メートルは霧で何も見えない状態だ。
そしてさらに強風が行く手を阻む。
好天気ならばドーンと赤岳が目の前に立ちはだかるのだが、どうも雲の中に居る感じで体に水滴がつく。
それが良いのか悪いのか、大キレットの岩稜(ルンゼというらしいが)では、あまり高所感は感じられなかった。
このガレ場地帯は、本当にこれは登山道なのか?と思えるほどで、まさに’手ごわい相手’なのだ。
ほとんど岩を登っていく感じで、そこを三点確保で歩くというより這って登る。









 
その途中で登山道でもないところから、いきなりヒョコッとベテラン登山家が現れた。
どうもこの人、大学か何かの教授らしいのだが、我々初心者にいろいろとダメ出しをさせられた。
まあ少し勉強になったけど、いったいどこから上がって来たのであろうか。
「そこから登ってきた」と指差す方向は、どう見ても崖であった。




それにしても南側は凄いコースだな



 
周りが霧で見えないため山頂も何も見えず、いったいいつまで登っていれば良いのだろう。
キレットの最後は、いっきに高度を上げる急な難所だ。



先が見えないよ


そこを何とか乗り切り、赤岳山頂に到着した。
山頂に着いても真っ白な世界だが、一応記念撮影をし感動の余韻に浸る(でも無いが)。





山頂小屋はさすがに連休という事もありかなりの登山客で込み合っていた。
まさに寝床はいわしの缶詰状態だが、疲れていたせいもあるので、床に就くと30秒で夢の中だ。
20時消灯で朝方までの爆睡。






 
しかし朝起きても辺りは白い世界。
ガスが取れないのだ。
これには他の登山客も溜息を漏らす以外、何をして良いかわからない。
とりあえずガスが取れるのを待つか、それともガスの中を歩くかだ。
もちろん自分はそこからまた寝てしまった。




ガスが取れないのだ


 
結局待てども取れないガスに嫌気をさし、あきらめて下山することにした。
時折、一瞬だけガスが取れて山頂が現れる。
何とか写真に収めることができたのが唯一の救いであった。




一瞬のタイミングでシャターを切った


 
赤岳から硫黄岳にかけての、稜線のダイナミックな風景を期待していた。
だが、この視界ゼロの中ではどうしようもないという事で、ショートカットして下山することにした。
それにしても、下山道では登ってくる登山者が多いこと。
やはりこの山は魅力的な山なのであろう。



神秘的な森


まあ、山全体は見ることができなかった。
しかし、途中途中の木々などの植物、岩肌、沢の流れ、小鳥や虫の鳴き声は、都心では味わえない美しいものだ。
そしてそれらの風景は、標高を下げるたびに姿を変えていく。
それだけでも十分八ヶ岳を満喫できると思う。
 
キャンプ場を過ぎ林道に入ると、見事な夏晴れだ。
後ろにそびえる八ヶ岳の上の方はやはり雲がかかっている。
(他の2000メーターを越える山も笠雲がかかっていたな)



いやー冷たいなあ


何はともあれやはり悔しい。
あのガスさえ無ければなと、自然を恨んでも仕方ない。
東京に帰るバスの中で周りの高い山々を目で追って居ると、何かやりきれない思いが次第に増してきた。





そして、もう一度近いうちに八ヶ岳に登る事を決意した。






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