- マリシテン -


2005.10.10〜11


中央フリーウェイではないが、長野に行く時に右手に八ヶ岳、左手に甲斐駒ヶ岳を眺めることが出来る。
その甲斐駒ヶ岳は、前から登ってみたい山の一つだった。


甲府のバス停のベンチで目を覚ますと、雨が降っていた。
小雨ではなく本降りと言ったところだ。
まだ夜明け前だが、どうも止みそうにない雨だ。
正直、これには少し参った。
始発のバスに乗り込み、北沢峠まで行く。

前までは、この北沢峠に行くのにも丸一日掛かったみたいだが、現在はバスがあるのでありがたい。
この北沢峠の標高は2000メーター。
そこからスタートだ。





しかし、何が好きでこんな雨の日に、山に登らなくてはならないのか。
晴れない空。
取れない霧。
降り続ける雨。
僕らは、晴天を狙って来たはずなのに。





樹林帯を越え、ハイマツ地帯を少し歩くと、駒津峰に着く。
霧のせいで、何も見えない(レンズにも水滴が付く)。
白一色だ。

ここから、山頂までは約1時間半だ。
ん?そんなもので着いてしまうのか。
峰にザックを置いて、見えない頂上を目指す。

雨が降ったり止んだりで、ボロボロになったスーパーセルジャケットではそれをしのぐ事が出来ない。
いい加減、新しい物に替えないといかんな。




頂上付近になると、白い岩が目立ちだす。
白い岩と、まるで南国のビーチの様な白い砂。
これは、花崗岩が風化したものだそうだ。
それをザクザクと踏みしめる。



山頂


山頂になると、周りに何もないから風が強い。
天候のせいで展望は望めない。





昔からの巡業の為に、立派な石造りの祠がある。
山は昔から、神を祭る所でもあったのだ。



前に見えるのはマリシテン


山頂は、風が強くとても寒い。
手がかじかむほどだ。
歩きやすい砂の道をザクザクと下る。

相棒が何か言っている。
マリシテ...。

ん?なんだ?

マリシテンだ。

山頂の肩口にあるもう一つのピークをマリシテンと呼ぶ。
漢字で書くと「魔利支天」となる。
何とも素敵なネーミングだ。
山の名前には、歴史上の人物や出来事が由来になっていることが多い。

マリシテン。
日本の山ではないみたいだ。





峠の山小屋で一夜を明かす。
南アルプスらしく、地味な山小屋だ。

消灯6時半。
起床3時半。
これじゃあ時差ボケになっちゃうよと、他の団体客が冗談を言っていたが、睡眠不足の僕にとってはありがたい。
毛布に潜り込むと、泥のように眠った。
完璧な睡眠だった。

夜明け前、頭上には星空が広がっていたので、何とか天候は持ちそうだ。

暗い登山道を、ヘッドライトを照らして歩く。
しかし僕はライトを持ってくるのを忘れてしまい、暗い中を手探りで歩く。
岩場であった為、さらに歩きづらいのだ。

後方から列になった団体のヘッドライトが、闇に浮かび綺麗だった。



聳え立つマリシテン


分岐点まで来ると、日が昇ってきた。
そこから見えるマリシテンは、異様にでかく見える。
圧巻だ。
団体は山頂を目指し、僕らは甲斐駒を背にして早川尾根の稜線を歩く。
稜線歩きは、登山の醍醐味の一つだ。



甲斐駒ヶ岳


少し雲が掛かっているが、2日目は何とか晴れてくれた。
甲斐駒の頂上は雪が積もったように綺麗で、これがまた見ていて見飽きない。



指している方向は、八ヶ岳だと思ったが金峰山あたり



太陽の光が眩しい。
北アルプスや、八ヶ岳など、他の山脈も雲から頭を出している。

北アルプスがある長野の上空は、全く雲が無い。
長野と山梨で、雲と空の境がきっちりと分かれているみたいだ。



アサヨ峰から北岳を望む



鳳凰山と、遠くに富士山


稜線からは、南アルプスが一望できる。
そんな眺めのロングトレイルだ。
しかし、やはり何と言っても、甲斐駒ヶ岳が素晴らしい。

登っている人が見えるかと目を凝らしたが、確認できず。
それだけ山がでかいと言うか、いかに人間がちっぽけな存在かがわかる。
山はでかいのだ。






稜線を歩いている時、なぜか分からないけど、大陸の事を考えていた。
いつか大陸と呼ばれる所を歩きたいと。



苔むした樹林帯も南アルプスの特徴



南アルプスは、とても緑が多い。
温暖な気候と豊富な雨量に恵まれて、木が良く育つのだ。

とにかく、水の量が凄い。
湧き水も豊富で、フレッシュなミネラルウォーターも飲み放題。

下山時の樹林帯も、神秘的で美しい。

登山や旅は、いろいろなトラブルや、天候、気持ちの持ちようなど、様々な影響で足取りが違ってくる。
いずれにしても、一歩を踏み出さないと前には進めないのである。

それは、一人ではとても難しいものではないだろうか?









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