- 永遠の木(宮之浦岳編) - 2005.10.21〜24 2日目。
早朝目が覚めると、ぱらぱらと雨が屋根を叩く。
屋久島だから仕方がないかと、少し気落ちしながら、雨具を着て沢へ顔を洗いに行く。 そういえば、昨晩離れの便所で見た、まるで壁に絵で描いたような大きな黒いクモは、どこへ行ったのだろうか? 小屋の周りには、雨具と大きなザックを持った幾人かのバックパッカー達が、出かける支度をしていた。 僕らは、少し霧が出ていて湿った森の中を、足取り重く入っていく。 森の中は、鳥の鳴き声や獣の鳴き声が響く。 キーキーと僕らを警戒している、猿の群れが頭上にいる。 木を揺さぶっていて、どうも朝食のジャマをしたみたいだ。 時折、太陽の光が差し込んできた。 しめた!雨は止みそうだ。 次第にその光は、木の葉を照らし、キラキラと輝きだす。 それにしても登山道としては、歩きやすい道だ。 相棒は、木の階段がどうも歩きづらいようだが、僕はこれはこれで良いと思った。 日が高くなるにつれ、青空が見え出した。 展望が開けると、やっと山らしい景色と、反対側は水平線が見える。 その水平線とは海の事で、それと平行に雲が連なっている。 さすがに、ここは島なのだと感じさせられる瞬間だ。 島の森を見下ろすと、ああ大自然だなと思う。 黒味岳のピークに立つと、物凄い突風が吹いていた。 島なので、他にさえぎる物が無いからだろう。 黒味岳ピーク(相棒撮影) 左の雲の掛かった山が宮之浦岳 巨大な雲が、次から次へと流されていく。 そして、雲間から宮之浦岳が現れないかとじっと耐えて待つ。 少し長い時間同じ場所にいたから、体はかなり冷えきっていたらしく、震えが止まらなかった。 今年は、運良く台風に遭わなかったが、去年は異常に多かった。 その台風をまともに食らうので、木々は相当に力強く、土に根を下ろしているのだろう。 風のおかげで、気持ちの良い青空が広がる。 上空では強い風が吹いているが、風を受けない所では実に暖かい。 山と海と島と空。 至る所から出る、新鮮な湧き水を飲む。 もう最高としか言いようがない。 すれ違うバックパッカー達もみんな笑顔で、幸せそうだ。 標高が高くなるにつれ、景色も変わる。 大きな木の次は、大きな岩だ。 緑のモコモコした上に、そういった岩が転々としている。 昔のマグマか何かから出来たものだろう。 地平線の彼方に種子島も見える 宮之浦岳頂上まであと少し ちょうど宮之浦岳のピークに到達した時に、また雲が空を覆いつくした。 島の天候は気まぐれなのだ。 天気が機嫌を損ねない様に、急いで今夜泊る小屋まで下る。 下山時に、登山道に遊歩道や、木の階段を設置している人たちがいた。 場所が場所だけに、これは大変な作業だ。 こういった苦労のおかげで、僕らは安全に山を歩くことが出来るのだ。 それにしても、腹が減って仕方がない。 朝からまともなものを食べてないからだ。 風景だけでお腹いっぱいと言うのは、無理なj話だ。 途中、大きな雄鹿とすれ違いながら、やっと小屋に着いた。 結構な人数だ。 登山口で一緒だった方とまた会い、今のうちに寝床を確保しないとなくなっちゃうよと言われ、すかさず確保する。 それだけ、小屋は満員だった。 夜はカップメンと、アルファライスと、ミルクチョコレートをお湯で溶かしたものをいただく。 しかし、これがもううまくて、たまらなかった。 この時は、これほどのご馳走は無いなと思ったくらいだ。 相棒は乾燥物チャンプルー麺 夜は以外にも暖かく、なかなか寝付けない(まあ、18時位でお休みタイムだからね)。 夜中に喉が渇き、水場は外だから面倒でも外へ出る。 少しは明るいかと思ったが、ほとんど真っ暗で何も見えない。 唯一、ヘッドライトの明かりだけが頼りだ。 なぜが東京湾の夜が少し恋しくなる。 ライトを照らし、手探りで水場に行くと、何やら怪しい二つの光。 なんだ、なんだ!?怖いなあと思いきや、それは鹿の目がライトで光っていただけだった。 鹿はライトを照らすと逃げていったが、彼らは夜行性なんだよな。 こんな真っ暗でも良く見えるなと思った。 ライトを消すと、本当に何も見えない。 月明かりも無い、完璧な闇の世界。 目を開いているのか、閉じているのか分からなず、とても不安になるし恐怖感を感じる。 僕はやっと水場にたどり着き、喉を潤し、そそくさと自分の寝袋へと戻っていった。 (縄文杉編へと続く) メニューへもどる |