- 旅の同志(北アルプス縦走後編) -


2005.8.11〜14


3日目の朝。
取れていない霧で、少しイライラしながら槍ヶ岳を目指す。
視界はゼロに近く、晴天は望めない状況だ。
とりあえず槍の肩に行き、状況しだいでルート変更を考える。



槍ヶ岳山荘。目の前の穂先も全然見えない。


槍ヶ岳山荘は、北アルプスのクロスロード的存在で、ここから四方にルートが延びている。
なので、ここで待ち合わせをしている登山者も居た。

とにもかくにも霧が凄いので、すこし待機することにした。
朝食をとり、端末のバッテリーを補充する。
テレビモニターでは、一応晴れとは表示されているが、それはあくまでも下界の事なのだろう。

登山は自己責任。
無理をして先に進み、まったく動けなくなると言う事もある。
初日に出くわしたパーティーも、槍沢を降りていった。
こんな日に、まして大キレットを越えるのも危険な事だろう。
一度は下山を考えたが、頭上に太陽が現れた。行けるか。
僕らは、キレットを目指し、天喰岳、南岳を越えていった。



この辺りは、岩だらけのガレ場



そして、いよいよキレット入り口へと来た。
相変わらず、ガスがはけない状況ではあったが。





さすがにこのルートは他の登山者は少ない。
ガスの影響で、穂高岳は望めないが、多少の緊張感があって良い。




異様な雰囲気が我々を飲み込んでいく



3000メーターから、一気に標高を落とす。
登山道という感じではなく岩壁を降りていく感じだ。
三点確保で、慎重に岩壁を降りていく。
気をつけなければならないのが、落石だ。
岩や、石がゴロゴロしているので、下にいる人には気をつけなければならない。








霧で見えないが、岩の柱や、奇妙な形をした岩が、シルエット状に浮かび上がる。
どれも、火山で出来た造形美だ。



一瞬霧が取れた


霧が取れ、一瞬だけ視界が広がった。
自分達が進もうとしている所に、山があり、そのまた後ろにでかい山がそびえ立つ。
そのそびえたっているのが、長谷川ピークか何かはわからない。
その後ろに見えた大きな山の影は、我々に挑戦、又は不安を感じさせる存在感だ。
今度は高度を上げていく。



稜線と言うより、鋭角な尾根






危険な箇所が続く


道無き道を行く。
いくつかのパーティーが、穂高方面から重い荷をしょってやってくる。
すれ違う場合はなかなか大変なのだ。






足がすくむ


大キレットの難所は、基本的には三点確保でやり通せる。
しかし、「これはヤバイ」と言う箇所が、個人的には4,5箇所ぐらいあった。
それは、ここは鎖があるべきであろう所に何も無かったり、掴む所が分からなかったりと。
整備された道を通るより、そういった自然のままの形の方が良いのかもしれないけれど。



背後には上ってきた稜線が続く。相棒が撮ってくれた素晴らしい絵だ。


山は、時に人間を受け入れないほど荒々しく、時にやさしく受け入れてくれるほど壮大な姿は、溜息がでるくらい素晴らしいものだ。



さらに登る。岩にはつくばる。その岩の向こうにうっすらと穂高が見える。



ここまで来れば、北穂高まであと少しだ。
時折、霧が取れて見える北穂高の姿は、かなりデカイものだ。

足元は断崖絶壁なので、まるで宙に舞っている様にも思える。



このでかい岩を越えれば、山頂はすぐだ


長かったキレットもあと少しだ。



北穂高山荘が見えた


最後の急斜面を登れば山頂だ。
しかし、山荘が見えているのだが、そこからがまたきつい。
体力的にはここが一番きつく、山荘が見えている分自分の足が前に出ない事が腹立たしい。
本当は奥穂高まで行く計画だったが、槍ヶ岳山荘で少し時間を取ったので、3日目は北穂高山荘に泊ることにした。



北穂高山頂から


山頂は風が途切れとぎれに吹いている。
大量の雲が、風で押し流され、その切れ間にキレットの岩肌が見える。
とても壮大な景観だが、なかなかキレットは姿を現してくれない。
それでも、ガスがはけないかと、山頂で粘る。
粘るという事も、時にはタイミングを掴むのに大切なことなのだ。
そして一瞬だが、ガスが取れてくれた。



キレット全景。肝心の槍の穂先は...。


いままで辿って来たキレットの全景が見えた。
手前の岩肌と、遠くの立山方面に見える山脈とが、見事なコントラストとなり浮かび上がる。
どちらかというと冷たい感じがする景観だが、それがまた息を呑む迫力だ。
音楽で言えば、シンフォニーと言った感じで、いろいろな物が1つの風景を創っている。



逆側の奥穂高側


反対側の奥穂高側では1人のカメラマンが、その岩肌を捕らえていた。
話をしてみると、その岩肌だけを撮影している。
それも今日やっと霧が取れてくれて、山小屋にきて3日目の事だったとか。
ある意味格好が良い。粘るという事も、時には必要だったりする。



涸沢を望む


日が落ちると、さすがに気温が下がる。
フリースを着込み、ずっと山頂にいたが、ガスはあまり取れてはくれなかった。


夜、外のトイレに行く時に夜空を眺めると、沢山の星が広がっていた。
明日は、きっと良い天候に恵まれるだろうと思ったが、早朝はまた霧の中だった。
御来光を待ったが、小雨も降ってきたので、諦めて下山する。

下山道はさすがに登ってくる人も多く、すれ違いが大変だ。
登山では、登る人が優先なのだ。

ふと穂高岳の方を見ると、徐々に霧が取れてきている感じがした。
それはあっという間なことで、景観が灰色から緑色へと変わった。



前穂高


山の天気は変わりやすいものと言うが、変わりすぎだろうと言うくらいだ。
見事な晴天で気持ちが良いが、正直もう少し山頂で粘っていれば、と少し後悔もした。

最終日になって、この晴天とは、運が良いのか悪いのかは分からないが、良いとしておこう。
それにしても、やはり太陽と青空というものは気持ちがいいもの。
少しの間、僕らは(他の登山者もそうだが)この景色に酔いしれた。





結局、ゴールの上高地ではまた雨が降ってきたのだけれど、無事4日間を終えた。
課題は残されていたが、良い旅であった。



旅の途中で出会った人、雨で心配をしてくれた人、そして相棒にも感謝したい。












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