- 黒部下の廊下 (前編)- 2007.10.20 これまで色々な山に登ってきたが、今回は山の頂では無い。 北アルプスの谷間にある黒部峡谷を歩くのだ。 ちょうど黒部川を上流に向かっていく感じで、その最終地点は黒部ダムになる。 しかし、ただ歩くわけではない。 その途中に、秘湯の温泉があるというのだ。 よしよし、ならばここは秋の紅葉シーズンという事もあり、この温泉に浸かろうではないかという企みだ。 基本的に僕は「温泉に行く」と言う行為はあまり好きではない。 というか、あくまで温泉という物はただのオプションに過ぎない。 だから今回は、風景で腹を満たし、あくまで温泉はデザートなのだ。
という事で、僕と相棒は深夜から東京を出発した。 前日の雨がいくらか残っている感じで、宇奈月温泉まで来た。 そこから、オレンジ色が鮮やかで何ともかわいらしいトロッコ列車に乗る。 ここはパノラマ列車と、ノーマル列車とあったが、パノラマの方は窓が付いていて暖かそうだがちょっと割り増し。 僕らは迷わず窓が無い、ほとんど貸しきり状態のノーマル列車に乗り込む。 発車前に女の人がツカツカやってきて写真と撮ってくれた。 これは記念のお写真という事だけれど、やはりこういう物はお約束なのだろうか? ゆっくり走るトロッコ列車に揺られて、約一時間で欅平に到着。 ここからが、登山(と言ってもあまり登らないが)の開始だ。 駅では約数十名の年配の団体さんが、みんなで記念撮影をしていた。 ムムム、このヒト達も同じコースを辿るのだろうか?と思っていたが、まさかねぇと軽く受け流していた。 登る前にストレッチをしていると、空が徐々に晴れてきた。 日頃の行いが良いからだろうか、朝のどんよりした天気が嘘のようだ。 気温も上がり最初は急斜面を登るので、早くも息が切れてしまう。 標高が1000メートル位で、やっと平らな細い道になる。 ここからは、ずっと高低差が無く、ほとんど断崖絶壁の道をひたすら歩く。 しかし、人がすれ違うことが困難な程狭い道だ。 ここから真下にある谷まで落ちてしまえば、はいサヨウナラという危険極まりない所なのだ。 なので、このルートは、雨の少ない9月、10月しか立ち入ることが出来ないのだ。 もちろんそういった危険な箇所は、しっかりと(?)針金やザイルがあるから、それを掴んでいれば一先ず安心だ。 朝まで雨が降っていたからか、至るところから水が出ている。 それだけ山自体が水を含んでいて、その小さな水の流れがやがて沢になり川となっていく。 黒部川が見えるよ この黒部川は最終的には富山湾にながれ込み、栄養たっぷりの水を含んだ湾内では、沢山の海の幸が捕れるわけだ。 その川沿いを歩くわけだから、やたらとクネクネ蛇行している。 結構歩いているのだが、道がヘアピンカーブ状になっている所もあり、実際にはそれほどの距離を進んでいない。 その為、あまり景色が変わらない気がするし、しかも先程の欅平駅のピンポンパンポーンと言うアナウンスまで聞こえる有様だ。 いくらか進むと、なにやら怪しいトンネルがあった。 中は真っ暗でなにやら咆哮が聞こえてきそうで、これは冒険心をくすぐられる。 すかさずヘッドライトを装着する。 入るや否や、コウモリでも出てくるのかと思ったが、まあそんな物は出てこない。 ただ、足元に水たまりがあるのと、やはり中は明かり一つ無く真っ暗であった。 山の天候は変わりやすく、また小雨が降ってきた。 ここからは、ほとんど同じような景色を黙々と歩くので、あれ?ここはさっき通った場所だと錯覚する。 次第に、相棒と冗談も言わなくなり、山小屋までひたすら歩く。 結構、本格的に雨が降り出し、アップダウンのない平坦な道を数時間も歩いている為、少し逼迫した気分になる。 それから、やっとの事で今晩とまる阿曽原温泉小屋が見えてきた。 山小屋と言っても、どちらかというとプレハブ小屋にやっとたどり着いた。 よーし、すぐさま温泉だあと思ったが、それが残念ながら改修作業という事だった。 代わりに仮設風呂があるみたいなので、仕方なくそれに入る事にした。 貸しきり状態 まあ、それでも一応源泉掛け流しみたいなので、なかなか気持ちが良かった。 明日は早いので、後は泥のように寝るだけである。 (後編に続くのだ) メニューへもどる |