黒部峡谷のこういった絶壁の岩を削った道を廊下と言い、下流の方を下の廊下、上流を上の廊下と呼ぶ。 その全体を、旧日電歩道と呼ぶ。ううむ、なかなか趣のあるネーミングだ。 その廊下、即ち旧日電歩道を毎年維持するのにも、結構な費用が掛かるみたいだ。 所々に発電の為の装置とかあるみたいで、斜面には電力会社関係の人達の脇道も幾つかあった。 それにしても凄い所を歩いている。 壁には少し太めの針金線があるから、それを掴んでいれば良いのだが、コレが無いとかなり危険だ。 もちろん上流の黒四ダムから来る人もいるので、上手い具合にすれ違わないといけない。 ここはお互い様で、譲り合いの気持ちが必要なのだ。 断崖絶壁の途中の窪みのある場所で、ビバークをしているツワモノもいた。 なかなか絶景なので、その豪快で秋による千変万化の美しさを写真に捉える方も多い。 S字峡 この辺りは立山連峰や鹿島槍ヶ岳などの3000メートル級の山に囲まれているから、日が昇らないうちは日陰になっている。 その山々の沢山の水がこの黒部川の流れを作っている。 至る所に湧き水もあり、飲もうと思えば飲むことが出来るかもしれないが、直に飲む天然水はかなり美味いのだろうな。 しかし、中には滝のようになっている箇所もあり、雨が降っている時は大変なのだろう。 そんな場所は、レインジャケットを着て通過していく。 誤ってもろに被ってしまうこともあるが、それもまた楽しいのである。 それとヘルメットを被っている人もいるが、落石にも気を付けなくてはならない。 十字峡付近 いくらか歩いていた断崖絶壁も、徐々に川面に近づきあまり高所感がなくなってきた。 またさらに歩くと、この道にも少し飽きてきた。 そしてやっと白龍峡に着いた。ここから黒四ダムまでは後半分くらいだろうか。 白龍峡 巨大で豪快な岩と、滝やコバルトブルーの川の音が、ここは秘境なのだと主張している。 一体全体どうすればこの様な容姿になるのだろうか、自然の偉大さを感じさせる場所だ。 目の前の大きな岩は、生き物を寄せ付けない迫力があるし、川の上流を見れば豪快な山が屹立している。 しかしよくこんな道を作った物だと、改めて感じる。 同じ北アルプスでも、山の頂と谷間では全く違った趣があるのだ。 それから、また長い道のりを歩く。 さすがに朝は大した物を食わなかったから、昼前には腹が減ってきた。 もう限界だというところで、漸く昼飯だ。 その辺りでお湯を沸かし、定番のカップ麺とアルファ米を食う。 いざランチタイムにした途端、あれほど人とすれ違っていたのに、人っ子一人通らなくなった。 何分距離が長い為に午前中のうちに距離を稼がなくてはならなく、黒4ダムから来る人ももう来ないのだろう。 あるいは後続の人たちもランチタイムなのかもしれない。 腹を満たし、後は黒四ダムをひたすら目指すだけだ。 それにしても2日目は天気に恵めれて良かった。 これが逆ルートの行程では、ちょっと渓谷の印象も変わっていただろう。 紅葉に関しては、もっと彩っているかなとし思ったけが、紅葉しているのは一部の植物だけであった。 静かで穏やかになった道を気持ちよく歩く。 やっと黒部ダムが見えてきた。 観光の為の放水はしていなく、いずれにしても夏の雨季の時期にダムの水が溜まるから、下からの豪快な放水は見れなかった。 なにやらこの放水の時は、サイレンで警告するらしいのだが、ちょっとそれも怖そうだった。 この辺りはもちろん自然も凄いが、それにも増して人間の力もまた偉大だ。 ダムにしてもトンネルにしても、莫大な費用と時間、それと犠牲者を含む沢山の人手で建設されたものだ。 そのお陰で、我々庶民は電気を使えるのだから、これは本当に有難い事だ。 このダムで一体どれだけの電気を供給できるのかは分からないが、普段生活しているだけではこういった源的な事は分からない。 最後は、黒部ダム脇っちょにある扉から黒部ダム施設に入りやっと到着。 周りの立山連峰などはすっかり雪化粧をしていて、これから山々は極寒の季節を迎えるのだろう。 (終わり) もどる |