- ストイック(谷川岳2) -


2007.7.21


天候が良ければ、2日間を使って谷川岳(1963m)を縦走する予定だった。

2年前の谷川連峰縦走計画で、残雪が酷い為、途中で為断念したのだった。
その清水峠付近からの登頂計画であったが、梅雨の残り雨で急遽予定を変更した。
2日間の予定を1日登山に変更し、雨を覚悟しあえてストイックな登山を選んだ。

土合から伸びている、西黒尾根を登る。
本来ならロープウェイで登るのがメジャーなのだが、ここはストイックに自分の足で登る。





登山口は標高1000メートルの位置にあり、雨はまだ降ってきていないが、霧が立ち込めている。
地面は、昨日降った雨でぬかるんでいて、非常に歩きにくい。





相棒はスポーツクラブのエアロバイクで汗を流しているだけあって、さすがに体力だけはある。
この時点で、日頃の運動不足や連日の仕事の疲れ、それに何よりもジメジメとした湿気で体力が奪われていく。





体力はもとより、こんな天気では気力さえ上がらない。
雨が降らない分だけましだが、景色は水墨画の様で、もちろんいくらか開けた場所などもその先は見えない。








ブツクサ言ってはいられず、悪路の坂を上っていく。
ある程度登りコルを過ぎると、鎖場が転々とある岩石地帯に変わっていく。
背負っているザックが軽いから良いが、これが重いと鎖場も一苦労だ。





周りに咲いていた花が、アジサイからニッコウキスゲが目立ち始める。
標高が高くなって来た証拠だ。





この辺りから、右足の膝上が痛くなってきた。
ヤバイ。
やはり運動不足だし、久々の登山だったからかも知れない。

経験上痛みがある程度酷くなると、次は痛みがすうっと消えてくる。
そうなる様に、とりあえず右足を揉みほぐし、左足に重心を乗せて歩く。
そうすると今度は左足が攣って来る。
次第にそれに馴れたのか、いつの間にか痛みは消えていった。





たぶん頂上は後少しだが、霧の為に山の頂きが見えない。
後どれくらい歩くのか分からないので、腕時計の標高計を頼りに足を前に出す。





相棒はさらに先へと進んでいく。
とにかく僕は腹ペコだった。





ま、まだ登るのか...。





と、そこで薄っすらと目の前に、大きな山影が現れた。
やっと頂上が見えたか!

そして、目の前に掛かっている霧が取れた。





西黒尾根からではないと、この景色は拝めないだろう。
谷川岳の険しい黒々とした岩肌が、流れる霧の間から現れる。





谷間からは次々に霧が舞い上がり、まるでそれは巨大な生き物の様だった。
その狭間をツバメが嘲笑うように、滑空していく。

雲海のさらに向こう側に見えるのが、前回縦走した笠ヶ岳あたりであろう。
僕は少しの間この場所に、立ち止まっていた。



谷川岳山頂


谷川岳の山頂は2つあり、各々トマの耳とオキの耳と言う。
そのどちらも、多分ローウェイから来た登山客で賑わっていた。
僕は静かに、徐々に霧に隠れていく山容を眺めていた。





下山は、一ノ倉岳などを通り、新潟の方へ抜けていく。
本当の試練が訪れるのは、この下山からだった。


さらに霧が濃くなり、視界はほとんど見えなくなった。
そして追い討ちを掛けるように、小雨が振り出す。
最初は我慢していたが、雨は止もうとはせず、パラパラと鉱山植物の葉に音を響かせた。
仕方なく、ザックからレインウェアを引っ張り出しそれを着る。





いくつかのピークを越え、やっと標高を落とす下山道は、泥濘と木々の枝で滑るすべる。
スパッツをしていなかった足は、終いには靴の中まで水が入り込んだくらいだ。
まだ景色が見えるのならば余裕はあるが、視界が無いとこれはほとんど苦行に近かった。
相棒も何度かすっころび、下山開始から黙々と歩く事5時間、ようやく新堂分岐に降り立った。



本来なら茂倉非難小屋で泊まるつもりだった


長い道のりだったし、とてもきつかった。
新堂分岐から、土樽と言う辺鄙な駅に向かう。

そしてやっとの事で、この無人駅に着いたは良いが、何と最終電車は数分前に出て行って手しまった。
我々は、まさかという思いで、五里霧中になってしまった。

ところが半分やけになっていると、のぼり電車が入ってくると言うアナウンスが入り、水上行きの電車が現れた。

はて?という思いと、安堵の思いが半分半分だが、地震の影響で17分もの遅れが生じてたのがそのカラクリだった。


かなり汚れた体を引きずり、ようやく東京に着いたのは、日付が変わる頃だった。






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