- 富士山に登る人々 -


2009.8.26


正直、富士山にはあまり興味は無かった。
無いわけでは無いが、アノ砂漠的のっぺりとした山道が、登山をするのに興味を抱かせなかったのだ。
だから富士山は、遠くで見ているのが良いのかなと思っていた。
(いつかは登らなくちゃと思っていたが)

しかし、Ar氏が「富士山に登りませんか」と言い出したので、それで重い腰を上げた。

昨今は、何故か知らないけど、富士山登山ブームらしい。
夏季には沢山の登山客が訪れ、落石や高山病などの被害が絶えない。
シーズンを少し外した、8月の後半に登頂日を設定した。

ルートは、大衆的な吉田コース。
深夜から登って、頂上に朝方着いて、昼過ぎに下山するという日帰りコースだ。


仕事を早く切り上げ、車で富士山の5合目まで行く。
5合目の駐車場は、思っていたより満車状態だった(と言うことは、すでにこれだけの人が登っているのだろう)。
車中で2時間ばかり仮眠する。

遅いか、早いか分からないが、午前1時半に登山開始。
気温は2度とすこぶる寒い。
空を見上げると、星々が夜空にぶちまけたように広がっていた。

登山は小学生以来というAr氏は、この日の為に体重を落として来ている。
それに、アウターとか靴を一通り揃え、万全の対策だ。
僕の方は便乗して買ったゴアテックスの帽子を、家に置いてきてしまったから情けない。




星空が凄かった



綺麗な星空に感嘆しながら、夜の登山道をヘッドライトを照らし歩く。
最初の分岐点で、年配の女性が歩いていた。
話を聞くと、先日に登ったのだが雨の為に9合目でリタイアしてしまい、今回はリベンジだそうだ。
車に夫を残しての一人での登山とは、なんともタフだ。
何に対しても、女の人のほうが粘り強いのかもしれない(執念深いと言ったら怒られるだろうか)。

スピーカーから登山案内のアナウンスが響いてく所で(夜は不気味)、登りが始まる。
向こうから、相方に支えられ、足を引きずり下山してくる人がいた。
よく見ると外人で、途中で足をくじいたらしく、なんとも痛々しかった。
何だかこれからの僕らの事を、予兆しているみたいだ。
いやいや、ネガティブな考えはよそうと、一歩一歩足を踏み出していく。





少しすると、人工的な光が見えてくるが、これは山小屋の光だった。
夜に富士五湖辺りからみると、随分高い所に縦長の光が見えるのだが、その正体はその山小屋の光なのだ。





各山小屋にはチップ制のトイレもあるから有難い。
少し登るたびに、こういった山小屋が何件もあり、それを通過するたびに標高を稼いで行く。

わりとゆっくり目で登っていたので、空が白けてきた。
そして、8合目で御来光を迎えてしまった。





既に雲の上に居たので、雲海が何処までも広がっていた。

周りに登山客も居るので、「凄い」とか「うわーっ」とか、感動の声が聞こえる。
みんなが登頂という同じ目的なので、ちょっとした連帯感が生まれてくる。





それにしても、富士山には老若男女沢山の人が登っている。
結構若い人が多く、へぇー富士山は人気者なんだなあと思う(北アルプスなんかは年配者の方が多い)。

ジャージ姿の若者4人組は何が楽しいのか、「ほふく前進やっちゃいまーす」と本当に階段を這っていた。
案の定、8合目後半で彼は「気持ちわりぃ」と、地べたに座り込んでいた。やれやれ。






9合目辺りから酸素も薄くなり、さすがに苦しくなってくる。
心臓の鼓動は、ドクドクと早くなり、息も上がってくる。

歩いては休みを繰り返す。
意識して呼吸をし、水分補給も小まめにする。

僕の方は、胸がムカムカしてきて、同行者もかなり体力を奪われている。
それに伴い睡魔も襲ってくるからこれはキツイ。
もう山頂は見えているのに、なかなか近づいてこない。

他の人も同じように、休み休み登っている。みんなキツイのである。
へばっている人や、中には嘔吐をする人も居る。

しかし、わりとスローペースで登っていた為、最後は意外と足取りが軽くなった。



鳥居をくぐれば山頂





やっと山頂。
予定時間を大幅に越えたが、そんな事はどうでもいい。
持ってきたコーラで乾杯をし、少し仮眠をする。



富士山はデカイ!


富士山の一番高い所は、剣ヶ峰と言って、火山口の反対側にある。
火山口を回り込むように、剣ヶ峰を目指す。





雲ひとつ無いので、頭上には真っ青な空しかない。
(おかけで又もや日焼けをしてしまったよ)
それに風も無く、静かにしていれば無音の世界だ。





途中、写真を撮ってくださいとカップルに声を掛けられた。
男性の方は、珍しい大判カメラを肩に掛けてわりとラフな格好なのに対し、女性は本格的な登山の格好なのが面白い。
それにしても僕は、6、7組くらいに写真を頼まれた。
(写真を撮るのは好きだから別に良いけど、今度は写真じゃなくてお金も取ろうかな)



オバちゃん軍団に撮ってもらった


天気も良いし、みんなニコニコ顔。
なかなか登山でこれだけのピーカンはあまり無いので、晴れて本当に良かったよ。





山頂近くでのおじさんは、御歳は74歳と言う。
何度も富士山に登っているらしく、これまた頭が下がりました。



下山はブルドーザーも通る、下山専用コース


さあ後は下るだけだと思っていたが、下りは下りでキツイ。
ブルドーザーも通る(上に物資を運んでいる)小石混じりの道を永遠に降りる。
非常に歩きづらいし、砂煙は立つしで、このジグザグ道が気が遠くなるくらい続く。
同行者は夢に出てきそうだと言うが、本当に悪夢のようにいつ終わるか分からないくらい長い。
僕は慣れているが、やはりちょっと高山病気味なのか、寝不足なのか頭痛が気になった。

外人さんのちょっと太めの女性が、転ぶたびに「シット!」と叫んでいてかわいそうになった。
もう腰が引けていて、歩くのも間々ならない。
最後の最後でもズシンと聴こえて振り返ると、その人が豪快にすっ転んでいた。
たぶんもう日本には来たくないんじゃないかな?と思った。
(海外から来る人も沢山いて、いろんな言語が飛び交っている)

登山口近くになると、またまた沢山の人が登って来る。
学校の生徒だろうか、団体さんが行列をなして通り過ぎていく。
(8合目の山小屋で1泊するらしい)
みんな礼儀正しく元気に「こんにちはー」と声を掛けてくる。
だから、こちらも礼儀正しく「こんにちは」を連呼しなければならなかった。
まあ、これからその元気もなくなるだろう。


何より、無事に登頂できたので良かった。
同行者も思ったより健闘してくれた。

富士山は1度登れば十分だと思った。
逆に言うと、一度は登っておいた方がいい山なのだ。
(富士山の魅力は以外に知られていなく、巨大なブナの林や、秘められた滝や池もあるのだ)

ところで、最初に会った、年配の女性はリベンジ出来ただろうか?
多分、出来たであろう。





メニューへもどる


























































































































































    
inserted by FC2 system