- 北沢峠から仙丈ケ岳へ - 2014.10.18 青森から帰って来て、その次の日の夜から深夜特急で甲府へ向かった。 台風18号でボツになってしまった仙丈ケ岳に登る為だ。 深夜未明に甲府に着く為、気温は10度と東京の12月並み。 早朝4時半の登山バス始発まで、この駅周辺で待たなければならない。 仮眠を駅のベンチでと言う訳にはいかないので、荷物が重くなるけど少しでも疲れを取る為、そして寒さを凌ぐ為に寝袋を持参した。 駅に隣接しているデパートのシャッターの前には既に寝袋がズラリと並んでいて、かなり異様な光景だった。 この人達はみな山登りに行く人だが、果たして明日のバスには全員乗れるのかとちょっと心配になってきた。 とにかく少しでも疲れを取っておきたいが、まるっきり眠れない。 幾ら深夜とは言え、ここは甲府駅。 灯りが煌々と点き、人通りがあるので非常に騒がしいのだ。 まあ公共の場所なので文句は言えないんだけど、耳栓くらいは持ってくればよかった。 殆ど眠らずに朝になってしまい、本当に4時半なんかにバスが来るのかと思ったが、すでに駅前に停車していた。 数人の登山客が席に座っていてその床には大きなザック置かれ、その中で乗車係のおばちゃんが「ハイ!乗車券見せたらすぐ座って!」と忙しそうに指示を出していた。 心配されていた人数だが、バスも2台体制で定員を超える事は無かった。 少々荒々しい対応だが、登山客には嬉しい山梨登山バスなのである(駅で寝ていた殆どの人は別の行き先だった)。 そこから2時間くらいバスに揺られ、甲府市内から山道へと入っていくと、太陽が登ってきて北岳が見えだしてきた。 広河原(北岳の登山道がある)と言うところで一旦下車し、今度は一回り小さいマイクロバスに乗り換える。 が、僕は最後の方で乗ってしまった為席が無くなってしまい、乗降口の階段の所で座って行くしか無かった。 ガタガタの林道をずっと横向の態勢で、しかも寝不足が祟ってか非常に気分が悪くなってきた。 「ここで気分が悪いから降ろしてくれ!」なんて言ったら、さぞ乗っている人に迷惑が掛るし、置いていかれるのもやだし我慢するしかなかった。 20分後やっとのことで登山口のある北沢峠に着いた。 ふう...。 広河原や北沢峠は、南アルプスの入口と言うべきか何度か来た事があり、今回の仙丈ケ岳や甲斐駒ケ岳や北岳のスタート地点でもある。 標高は2000メーターなので、この時期はさすがに寒い。 バスに乗っている時も思ったが、南アルプスは若い登山客が目立つ。 たぶん、北アルプス程交通が整備されてないので、今回みたいに朝早いハードな計画に成らざるを得ないからなのか、あまり年配の人が来ないのではと思う。 土曜日ということもあり、とにかくバスが満員御礼になる程(僕の席も無くなるくらい)、登山客が多かった。 しかし、いざ登山を開始すると、誰一人登っている人が居ない。 僕らだけなのだ。 僕らを覗くその殆どの人は、甲斐駒ケ岳の方に向かったのであった。 甲斐駒ケ岳は2回登っているし、北岳、そしてちょっと離れた鳳凰三山も登っているので、今回は初めての仙丈ケ岳と言う訳なのだ。 北岳は、あまり認知度は無いが、富士山に次ぐ日本第2位の高さ。 甲斐駒ケ岳は、3000メーターは超えないが、山頂付近の花崗岩の白さが美しく、とにかく見た目が良い。 鳳凰山は、オベリスクという象徴的な山頂で、富士山が良く見える。 仙丈ケ岳は、高さ的には3000メーターオーバーだが、その3つの山に比べるとのっぺりとした(良い意味では女性的な)山稜なのだ。 今回は日帰り(山荘は10月中旬で終わってしまう)の計画だ。 樹林帯が良い感じだ 秋の登山は最高である。 まず天気が安定しているし、運動をするのに適当な気温が良い。 相棒と冗談や馬鹿話をしながら登っていくが、息が上がってきて途中から寡黙になってしまう。 薮沢新道 上流から流れてくる水は非常に冷たく、所々凍りついていたり氷柱が出来たいた。 あと一か月もすれば、ここも真っ白になってしまうだろう。 途中の薮沢小屋まで着いた時は、標高が上がったお陰で甲斐駒ケ岳が綺麗に見える。 いやあ、それにしても天気が良く、最初は冷たかった手先も暖かくなってきた。 風もなく実に穏やかでこれぞ登山日和だけど、鼻水が出るのはやはり気温が低いせいだろう。 その馬の背ヒュッテのスタッフだろうか、ちょうど小屋を閉める(この場合山を降りるとでも言うのか)時にかちあった。 「日帰りで?」と聞かれたので、そうだと答えると「かなり道のりは長いですよ」とあまり嬉しくない返事が返ってきた。 そ、そうなのか...。 先が思いやられるなあ。 遠くに見える建物が仙丈小屋 ハイマツエリアに入ると、どどーんと仙丈ケ岳の中心部が見えてきた。 これはでかいし、なんと雪が積もっているではないか! 御嶽山にも雪が降ったとのニュースをやっていたが、この仙丈ケ岳にも雪が降ったのだ。 そう言えば、御嶽山の噴火のニュースには驚いた。 8月に御嶽山に登っている事もあり、正にあの場所が地獄の様になってしまったかと思うと本当に信じられなかった。 しかも、この日の様に穏やかな日であったが為尚更だ。 確かに自然にはリスクは付きものである。 もしかしたら、自分自身が噴火に巻き込まれる可能性だってあったはずである。 犠牲者の方々にご冥福を祈るとともに、早く元の綺麗な御嶽山に戻ってほしいと願うのである。 標高2500メーター辺りから、雪が目立ち始め、場所によってはアイスバーンになっている個所もある。 これは、アイゼンが無いときついかもしれないし、下手したら引き返す事も考えられる。 ただ、頂上から下山してきた人に聞いたら、アイゼンが無くても何とか降りれたとの事で、それを聞いて一安心。 相棒が、階段で滑ったりしていたが、ゆっくり進むことにより何とか仙丈小屋に着いた。 昼近くになり、ここで昼食を摂る。 雪解け水を沸かしたお湯で暖かいコーヒーでも飲みたいが、時間が押しているのでカップ麺だけすすって早々山頂を目指す。 それにしても甲斐駒ケ岳が美しいが、どうも雪が積もっているのはこちらの仙丈の方だけの様だ。 山頂は見えているが、これが中々着かない。 鼻水は出るし息は切れるが、ここから気合いのラストスパートである! もう頂上は目と鼻の先だ。 狭い山頂から北岳 昼丁度に山頂へ到着! 目の前には北岳のパノラマが広がる。 眼下に見えるのは駒ケ根の辺り 快晴の空の下、苦労して登って来た甲斐があった瞬間だ(先週の台風とは大違いだろう)。 相棒も相当疲れているらしく、ちょっと遅れて山頂に到着。 だが、先ほどのアイスバーンで時間を使ってしまい、あまり長居は出来なく直ぐに下山! 帰りのバスの時間は15時半なのだ。 左手に甲斐駒ケ岳 中央奥に鳳凰三山 左手に甲斐駒、右手に北岳とを仰ぎながら、尾根伝いを歩いていく。 縦走は風もなく実に気持ちが良い。 この辺りになると登山客も増えてきて、その殆どの人は尾根ルートから登って来たのだと思う。 薮沢新道だと雪が積もっている可能性も有る為に、尾根伝いのルートを選んだのだろう(現に雪が積もっていたし)。 しかし、この尾根の方ももちろん雪やアイスバーンになった箇所も幾つかあり、その場合どうしても時間をロスしてしまう。 途中、本当に15時半まで北沢峠に降りれるのか危うくなってきた。 登りに比べ下山時は、体力的に苦しくは無いが、足が疲れてくるのである。 雪の影響さえなければもう少し時間が稼げたが、きっちりかっちりの相棒の計画より30分くらい遅れている。 登山と言うものはいくらか余裕を持って行うべきなのであるが。 もし万が一バスに乗れなかったとしたら、逆方面の駒ケ根行きのバスに乗って...いや、北沢峠の山小屋で泊まるか...。 とにかく急げ!相棒! 急いだ甲斐もあり、何だかんだで30分前の15時に下山出来た。 あの薮沢小屋の人が言っていた通り、”先の長い道のり”だった。 それにしてもいつも思うんだけど、ここから山頂目指すのはかなりききつそうだなあと他人事のように思う。 実際、きつかったからね。 帰りのバスでは、また乗車係のおばちゃんに「お疲れ様!ハイ、乗車券見せたらすぐ座って!」と捲し立てられる。 疲れた体をバスのシートに押しつけると直ぐに睡魔が襲ってきた。 唸るエンジンの音でふと目が覚めると、バスは山道を物凄いスピードで駆け下りていた。 恐るべし山梨登山バス! メニューへもどる |